双極バラエティ

こんにちは。双極性障害Ⅱ型の33歳男が日常をくだらないテイストで綴っていくブログです。

もし桃太郎が双極性障害(ラピッドサイクラー)だったら(1)

昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがおりまして、
細かいところは省略しますが既存の桃太郎の話通りなんやかんやで桃から生まれし男児が、桃太郎と名付けられて二年で立派な青年に成長しました。




(おじおばの家にて)


おじいさん「桃太郎や、よくぞここまで立派に成長してくれた。実は今日、折り入って相談があってな。

この村に鬼たちがたびたびやってきて悪さをし、村人たちが困っておる。それで……」


超絶躁状態の桃太郎「はい!分かりました!
全部聞かずとも分かりました!!

世の中全ての悩みごとは私桃太郎にお任せあれ!!
鬼退治に鬼ヶ島に行って参ります今すぐ行きますさよなら!!!」


おじいさん「え(戸惑い)、そ、そうかそうかじゃあ頼むよ」

躁の桃太郎「片っ端から鬼をぶち殺して参ります!」



おばあさん「おい桃太郎や、旅立つ前にこのきびだんごを持っておいきなさ……」

おじいさん「もう行ったよ」








そうして鬼退治の旅に出てから二時間後、深い森を歩き続ける桃太郎は、なぜか、足を進めるにつれ自信とやる気をなくしていきました。





桃太郎「ああ……やっぱ行きたくない……まことに鬼ヶ島行きたくない……



なんで僕は、鬼退治をするなんて言ってしまったんだ……

何を根拠に、鬼退治なんて大それたことができると思ってしまったんだよ……


できるわけない、できるわけないよ。

鬼退治をするための教育を特に受けた訳でもなく、この二年でひたすら身体が発育しただけの僕が鬼を倒せる訳ないじゃん……それで倒せるんなら他の健康な若者でもやれるわ。

ていうか、鬼退治するのに桃から生まれたバックグラウンドは必要性ないやんけ……

もうやだ、この旅やめたい……」



うつになってきた桃太郎「ダメだ……僕はなんてダメな奴なんだ……一度受け負ったしごとから逃げようとするなんて、僕は人間のクズだ……

いや果たして桃から生まれた僕は人間なのか……人間とは何なのか……もう嫌だ……頭がおかしくなったようだ……生誕二年にして生きるのが辛い……消えたい、この世から消えてしまいたい……」




心身に支障をきたしたせいか、一人旅をしながら不自然な一人言を話し始め、あげくには希死念慮が急激に高まってきた桃太郎。



桃太郎の頭の中はイヤな感情に支配されていました。


そのまま三十分ほど森を歩き進め、首をくくるのにちょうどいい太い樹を発見し枝に自分のマフラーを結びつけていたところ、後方から、「あの!」という声が聞こえてきました。



振り返ると、そこには一匹のけものがいました。




???「桃太郎さんですよね。」


桃太郎「はい、私は桃太郎ですが、あなたは?」


???「私は犬です。」




犬「桃太郎さん、早まってはいけません。見たところ、どうやらあなたは少し疲れてしまっているようだ。

正常な思考ができなくて、そのような自殺行為をしようとしてしまっているのです。

こうしてこの場面でめぐり合えたのも何かの縁だ。ここは一つ、騙されたと思って私のところに来ませんか。」


桃太郎「あなたのところに行くって?

どういうことなんだ。犬さん、あなたは一体……??」


犬「申し遅れました。

私、『森の中メンタルクリニック』にて精神科医をしている者です。」






自殺を試みた途中、突然現れた精神科医を名乗る犬っころになんとなく言いくるめられた桃太郎は、まんまと犬について歩いていき、診療所とおぼしき建物に到着しました。



桃太郎「驚いた、こんなうっそうとした森の中に、心療内科があるなんて。

いや、それ以前に人語を話す犬に出合ったことも衝撃的だ。」


犬「桃の中から生まれたあなたに不思議がられる筋合いはありませんよ。

まぁ、中でゆっくり話をしましょう。お入りください」



まんまと言いくるめられた、どうやら結構言いくるめられやすいタイプである桃太郎は、犬について建物の中に入り、診察室と思われる部屋に入室しました。



犬「桃太郎さん。あなた、何か悩みを抱えているのではないですか。どうやらのっぴきならぬ事情があり、森の中に足を踏み入れたようだ。」


桃太郎「実は育ての親に鬼退治に鬼ヶ島へ行くように頼まれまして。最初はオーケーしたものの、旅が進むにつれてだんだん自信が持てなくなり。

しかしながら、自ら進んで受け負ったしごとから逃げる訳にはいかないという気持ちが膨らみ、自分を責めることしかできなくて、あげくの果てに死んでしまいたいと思うようになったのです。」



犬「桃太郎さん。あなたはとても責任感の強いお方のようだ。

しかしその責任感の強さから、自分を肯定できないようになってしまっているのかもしれません。


あなたは、うつ状態になっているようです。とりあえず今日のところはドグマチールという薬を処方しますので、それを服用して様子を見ましょう。一週間後、また診察にいらしてください。」



桃太郎「自分がうつ病というのは受け入れがたいものがありますが……

分かりました。しかし私には鬼退治という使命があります。治療と並行して鬼をぶち殺すための旅を続けなければなりません。私はどうすれば……」


犬「その鬼退治なんですが……」


桃太郎「はい?」


犬「一旦諦めて、自宅に帰って下さい。あなたは、自身が認識している以上に心身に負担を抱えた状態にあります。」


桃太郎「しかしそういう訳には……一度頼まれたしごとをフイにするのは……」


犬「鬼のことの前に、あなたの体調が一番大事です。安静にする必要があるのです。まずはゆっくり自宅で休養することを考えてください。」


桃太郎「わ、分かりました。」




鬼退治に出て数時間のうちに、人語をかいす犬に言いくるめられ自宅に帰ることになった桃太郎。

果たして彼は鬼退治の旅を再開することができるのか?

また、彼は本当にうつ病なのか?



「桃太郎が双極性障害だったら」、次回に続く!

求められてなくても続く!